ボーダーライン。Neo【上】
 左手の薬指にぴったりとはまった七号の華奢なリング。

 よくサイズが分かったね? と訊ねると、檜は嘘か真か、お店の店員さんにあたしとよく似た背格好の人がいて、その人の手を触らせて貰ったと言う。

 ーーあたし以外の女の人の手、触ったんだ。

 指輪の号数を探る為とは言え、正直その答えはいただけなかったが。

 あたしは素直に喜んだ。

 檜にありがとう、と言い、やはり黙っているのは心苦しく、本心を語る事にした。

「檜の気持ちは勿論、充分に嬉しいんだけど。あたしはこうやって形にこだわらなくても、一緒に居てくれるだけで幸せなんだよ?」

 急に真顔になった檜に、あたしは目を伏せた。

「気を……、悪くさせたらごめんなさい。
だけど檜の事だから。この為に、またバイト頑張ったんだろうなって。思っちゃって」

「……いや」

 彼は切なそうに眉を寄せ、少しの間押し黙った。

 そして彼の想いを滔々(とうとう)と語ってくれた。

 檜はやはり、あたしとの年の差を気にしていた。

 まだ生徒で、未成年で、子供だという枠組みに居るのが嫌で、早く大人になりたいと言った。

 あたしが夏まで付き合っていた圭介の年齢が、檜より十個も上なせいもあり、檜は自分の価値を経済力で測ろうとしていた。

< 237 / 269 >

この作品をシェア

pagetop