ボーダーライン。Neo【上】
「俺より十個も上の、年上の男と付き合ってたお前が……何で俺みたいな子供(がき)を好きになってくれたんだろって。
 それが一時的なモンだったらどうしよって不安になったし。
 だからこそ年カンケー無く、俺だって頼りになるんだって示したかった……って言うか」

 そこで一拍口を噤み、彼の目線は足元へ落ちた。

「俺はお前の、過去の男に負けたくないんだ」

 切実に訴えるその顔を見て、あたしは胸を押さえた。

 その表情に、いつしか空港で受けた、あの告白が思い出された。

 ーーだから……、なんだ。

 中々逢えなかった檜の行動が、ようやく腑に落ちた。

 あたしは恋人同士として、逢う時間に価値を置いていた。

 でも檜は違う。

 彼は、男として、彼氏としての誇りを大切にしていた。

 年上の彼女と付き合うのだから、それなりに背伸びをし、イベントが有れば社会人並みのプレゼントも用意しなければいけない。そう思っているようだった。

 それがきっと檜の誇り、プライドなのだ。

 付き合っている以上、一緒にいる時間はいつでも作れる。でも、お金は自らが稼がなければ手に入らない。

 そして同時に、歌手になる為の夢にも時間とお金がかかる。

 あたしは檜を見て、こんなに違うんだと理解した。

 男と女で、考え方や価値観が全くと言っていいほど異なる。

< 238 / 269 >

この作品をシェア

pagetop