ボーダーライン。Neo【上】
「寝室に布団敷いてて。そう言えば慎ちゃんの洋服箪笥(ようふくだんす)の中がぐちゃぐちゃだったなぁ~って思い出して。整理してたの」

 いただきます、と手を合わせ、平然と箸を持ち上げる。

「慎ちゃんA型だけど、そういうとこは適当だよね?」

「アハハ、そうなんだ? ごめんごめん。あ、始まったよ」

 取り繕うように、慎ちゃんがテレビへ話題を移した。

 金曜の夜に放送される生放送の音楽番組を見て、溜め息をつく。

「またMパラ? たまには違うの見ようよ?」

「違うのって。今日大したバラエティーやってないし、コレでいいじゃん?」

 そう言って彼はシチューを口へ運び「お、うまい!」と舌鼓をうつ。

 それもそうか、と眉を下げ、あたしはテレビに目を向けた。

 華やかな脚光を浴び、拍手に出迎えられながら白い階段を下りる四人組。スタジオの大型ビジョンには、そのグループ名が大きく浮かび上がっている。

 最早こうしたメディアを通して見るのが日常になりつつあるHinokiを見つめ、真顔で目を細めた。

 今日もその手首に、クロノグラフの腕時計がある事をつい確認してしまう。

「あ、そう言えばさ」

 箸を進める慎ちゃんが再び口を開いた。
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