ボーダーライン。Neo【上】
「顔見せて?」

 彼女はポロポロと涙を零し、唇を震わせた。

「幸子。可愛いよ」

 僅かに開いた口の隙間に舌をくぐらせ、彼女のそれを絡め取る。

指の動きを浅く深く、激しく往復すると幸子は体を揺すり、背を弓なりに反らせた。

 きゅうっ、と二本指を締め付け、僕は幸子の嬌声を飲み込む。

 まずは一回め、と唱え、一度幸子の体から身を引いた。

 すぐ側にある棚の引き出しを開け、小さな銀色の包みを二枚取り出す。

 一枚を丁寧に取り付け、幸子を見つめた。

 幸子は繭の中にいるさなぎみたいで、シーツに包まったまま背を向けていた。

 ふと、初めて彼女を抱いた夜を思い出していた。

 担任教師である幸子と想いが通じ合い、あの日もこんな風に彼女を探索し、求めていたなと思うと、今の自分がひどく滑稽に感じられた。

 幸子を抱いている行為はあの頃と同じなのに、状況はガラリと変わっている。

 婚約者のいる幸子と交わるなんて、間男も甚だしい。僕は自嘲気味に笑った。

 シーツを抱き締めたままの幸子からそれを奪い取り、再びぴたりと肌を合わせた。

「まだ濡れてる?」

 言いながら指を割れ目に滑り込ませ、中をくちゅんと搔きまわす。浅い場所を()ね上げると、幸子は、はぁ、と気怠げな息をついた。
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