ボーダーライン。Neo【上】
「さっき帰って来る時、駅でコイツの話聞いた。FAVORITEの……Hinoki、だっけ?」

「え?」

 あたしはテレビからパッと目を逸らし、彼を見た。

「雑誌の特集で"抱かれたい男"ナンバーワン、なんだって」

「抱かれたい男?」

「そっ。で、二位は坂城(さかき) (とおる)

「へぇ。まぁ坂城 透ならあたしも好きだけど」

「え。そうなんだ?」

「うん。ドラマとかよく出てて、演技もうまいから」

 言ってから思わず苦笑がもれた。

「でも。そういうランキングって、正直下らないよね?」

「だよな~。話してたのが女子高生なんだけどさ? 何の恥じらいも無く、私も抱かれたい~、とかって大騒ぎしてて。こりゃ日本の行く末が心配になるなって思ったよ」

「アハハっ、そうなんだ?」

 うん、と頷き、慎ちゃんはオムレツを箸で切る。

「けど、歌は良いよな?」

 テレビを見つめる彼に、キョトンとした。

「FAVORITE。サチはあんまり興味無いみたいだけど」

「え、ああ」

 あたしは、そうね、と箸を置き、グラスのお茶へ口を付けた。
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