ボーダーライン。Neo【上】
「さっきも言ったけど、ボーカルのHinokiって今凄い人気だよな。
そう言や最近、CMにも出てたな。ほら、何だっけ。炭酸飲料の……」
顔をしかめ、思い出そうとする彼に、軽く答えた。
「うん、分かる。フォンタでしょ?」
「あ、そうそう! それ。あんな大企業のCMに起用されるって。
コイツらまだ十代の後半か、二十代そこそこだろ? こんな若いのに凄いよな~」
俺なんかこの歳になってやっとマトモな給料が貰えてるのに、と慎ちゃんはため息を吐いた。
「アハハっ、芸能人と比べても仕方無いって」
「そうなんだけどさ」
テレビから賑やかな前奏が聞こえ、若い女の子の歌が始まる。慎ちゃんは、お、と口をすぼめた。
「ねぇ、慎ちゃん」
「ん?」
「お義父さん、神前結婚じゃ無くても良いって言ってた?」
画面に目を留めたまま、彼は「ああ」と返事をする。
「俺たちの結婚式なんだから好きにして良いってさ。
何処か良い教会でも見つかった?」
そう言ってチラリと向けられる慎ちゃんの視線。あたしは頬にえくぼを作り、まぁね、と笑った。
彼はやれやれと肩をすくめる。