ボーダーライン。Neo【上】
「ジューンブライド。別にこだわらなくても良かったんじゃないか? ちゃちゃっと式やって、籍入れてさ」
「そんな事ないわよ~。
てか。良い日取りで好きな教会でってなったら、式の準備には最低半年かけるものよ? 六月は人気だし、一年前から予約する人だっているんだから」
そう言うもんかねぇ、と彼は相変わらずの呆れ顔だ。あたしは困った顔で肩をすくめた。
「ただ。来年はあたしも三十二でしょう? 今更ウェディングドレスって、おかしく無いかな?」
真面目に説いている様子が可笑しいのか、慎ちゃんは、アハハ、と笑う。
「全然。おかしくないよ? サチは元々童顔だし、そんな歳には見えないから」
食べ終えた食器を重ね、慎ちゃんはご馳走さま、と席を立つ。
そのままシンクに食器を運び、風呂でも入るかな、と浴室に向かった。
「そんな歳って。慎ちゃんはひとこと余計なんだから」
あたしは小さく笑い、自分の食器も同様にさげた。
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