ボーダーライン。Neo【上】
「いや、そんな事もないぞ? 手立てはある」
「どんな??」
「俺ら卒業生なんだから、学校訪問して斉藤あたりに聞いたら何とかなるかもしれない」
彼氏の言葉に彼女は声を弾ませ、そっかぁ、と嬉しそうな顔をする。
ふたりの会話に耳を傾け、今度はまじまじとその風貌を観察した。
彼女の方は胸元まで伸ばした髪をくるくると巻き、ニーハイのブーツにミニスカートで仕草のひとつひとつが女らしい。
一方彼氏の方は茶髪をワックスで感じよくまとめ、カジュアルなコートにショートブーツ、そして話す口調は穏やかそのもの。
二人を見るのに必死になりすぎて、出て行くOLさんへ、ありがとうございました、と言うのを忘れたぐらいだった。
もしかして、と急に閃いた。
注文が決まったらしく、ミニスカートの彼女は笑顔で、すみません、と言い近付いて来た。
目が合った瞬間、あ、と口を開け、指を差される。
やっぱり、と思った。
「え? うそっ!! さっちゃん先生!??」
「え、マジ??」
彼氏も彼女同様に近寄り、目を見張る。
「内田くんと水城さん、よね?」
あたしは普段の笑みでそう訊ねていたが、内心はこんな偶然があるのだな、と心底驚いていた。
きっと今朝仕事に来る前に読んだ日記のせいだろう。
かつての教え子である、二年二組の内田 勇介くんと水城 奈々さんは、檜にそれなりの影響を及ぼし、深い関わり合いを持っていた。
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