ボーダーライン。Neo【上】
「あなたを見てると。昔好きだった彼を思い出す」
「え?」
無意識にそんな言葉がもれた。
「えっと。それ。どんなリアクション取ったらいいか分かんないんだけど」
困った風に眉を下げ、秋月くんはポリポリと頭を掻いた。
「それもそうね」
言いながらいつも意識的にする、教師の笑みを浮かべた。
「秋月くん、これから花火行くのよね?」
「ああ、うん」
「水城さん、あなたの事待ってるんじゃない? 早く行ってあげなさい」
「……は?」
予想に反し、秋月くんは眉をしかめ、怪訝な顔をする。あたしは首を傾げた。
「だって。あなたの彼女なんでしょう?」
その言葉に何かが腑に落ちたらしく、納得したような表情で、彼は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「つーか。先生でもそんな話、気になったりするんだ?」
「え?」
「誰と誰が付き合ってるとかそういうの」
言われて、あたしは目を瞬いた。別に気になる訳では無いんだけどな、と思いつつ、頬を緩めた。
とにかく、いつも自分の事で精一杯のあたしは、他人に無関心だと言われる事はあっても、その逆は有り得ない。
この子の目に一体あたしはどう映っているのだろう、と何と無く気になったが、聞かずに立ち去る事にした。