ボーダーライン。Neo【上】
「それじゃあ、あたしは宿舎に戻るわね?」
言いながら秋月くんとすれ違うと、追い掛ける声が足を止めた。
「付き合ってないから!」
あたしはびっくりして振り返る。
「ナ。……水城は友達で、彼女とかそんなんじゃない」
どういう意図があるのか、秋月くんは真剣な目で告げていた。
生徒の色恋に何と答えるべきか言葉が見つからず、あたしは曖昧に笑った後、そう、と呟き、再び踵を返した。
2
野外活動を境に、どういう訳か、三日に一度のペースで秋月くんからメールが届くようになった。
メールの内容は、テレビ番組や晩御飯の献立といった、取り留めのない日常会話だが。
彼氏の浮気から、憂鬱な日々を過ごすあたしにとっては、秋月くんのそのメールが癒しとなり、充分な効果を発揮していた。
メールを受け取るたび、ウキウキと気持ちが舞い上がり、自らが受け持つクラスの生徒に、良からぬ想いまで芽生えそうになる。
一度、あたしの帰宅時間まで駐車場で待っていた彼を、部屋に上げた事もあった。
一個人の生徒を特別扱いするのは許されない行為だけど。
秋月くんとの会話は日頃の憂さを晴らしてくれると同時に、あたしは彼という人格に興味を持ち、個人的に話してみたいと思うようになっていた。
言いながら秋月くんとすれ違うと、追い掛ける声が足を止めた。
「付き合ってないから!」
あたしはびっくりして振り返る。
「ナ。……水城は友達で、彼女とかそんなんじゃない」
どういう意図があるのか、秋月くんは真剣な目で告げていた。
生徒の色恋に何と答えるべきか言葉が見つからず、あたしは曖昧に笑った後、そう、と呟き、再び踵を返した。
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野外活動を境に、どういう訳か、三日に一度のペースで秋月くんからメールが届くようになった。
メールの内容は、テレビ番組や晩御飯の献立といった、取り留めのない日常会話だが。
彼氏の浮気から、憂鬱な日々を過ごすあたしにとっては、秋月くんのそのメールが癒しとなり、充分な効果を発揮していた。
メールを受け取るたび、ウキウキと気持ちが舞い上がり、自らが受け持つクラスの生徒に、良からぬ想いまで芽生えそうになる。
一度、あたしの帰宅時間まで駐車場で待っていた彼を、部屋に上げた事もあった。
一個人の生徒を特別扱いするのは許されない行為だけど。
秋月くんとの会話は日頃の憂さを晴らしてくれると同時に、あたしは彼という人格に興味を持ち、個人的に話してみたいと思うようになっていた。