ボーダーライン。Neo【上】

「なるほど~。八つ下の坊や達にまんまとからかわれて? それでサチは怒ってんのか」

「別に怒ってないし」

 柔らかなオレンジ色の照明が降り注ぐ、とあるショットバー。

 カウンター席で隣りに座る親友に目もくれず、あたしは目の前のグラスに手を伸ばした。それを一気に飲み干す。

「だって今日、飲むピッチ早すぎ」

「それは~。美波があたしをほったらかすから~」

「ごめんごめん、最近仕事忙しくてさ」

「分かってるけど」

 言いながら自分の手元に目を落とした。

「最近どう? 圭介さん」

「どうもこうも無いよ? 至って変わらず、キャバ嬢にムチュー」

「そっかぁ」

 眉を下げため息をつくと、あたしの親友、二葉(ふたば) 美波(みなみ)は前髪をかきあげた。

 ロングヘアをアップに纏め、紺のスーツに身を包む黒髪美人の美波は、誰が見てもキャリアウーマン、かつ‘仕事の出来る女’だ。

「すみませ~ん、梅酒ロックで~」

「ちょっと、サチ! 飲み過ぎだってっ」

「いいのいいの、明日はお休みなんだからぁ」

 美波が止めるのも聞かず、あたしはマスターに注文を通す。

「サチ、さぁ」

「うん?」

「ハッキリさせた方がいいよ? 圭介さんの事」

 チラリと美波を横目で見る。
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