ボーダーライン。Neo【上】

「浮気はとっくにバレてますって? その女と別れろって?」

「……うん」

 カウンター席に、注文したお酒が置かれた。

 グラスの中で揺れる液体を、見るとは無しに見つめる。

「分かってるんだけどね。継続か別れか。どちらかを選ばなきゃいけない事は。

でも三年も付き合っちゃうと別れるに別れらんなくて。

ただ惰性で一緒にいるだけなのにね」

周りの様子を窺い、美波は小声で訊いた。

「サチさ……。言いにくいんだけど。ちゃんとエッチはしてる?」

 あたしはぼんやりと宙を見つめたまま、のろのろと首を振る。

「……もう半年? してない」

「そんなに?!」

「ん。だって、何かイヤなんだもん。気持ち悪くって」

「あちゃ~。それ、マジで別れた方がいいんじゃない?」

「うん。それをね? ず~っと考えてんの!」

 酔いが手伝い、あたしは陽気に笑った。それと共に、多少、コンプレックスともいえる‘えくぼ’が両頬にできる。

 美波は呆れて肩をすくめた。

「あ、そうだ。いっこサチに訊きたいんだけどさ」

「ん~?」

 グラスに口をつけ、再びアルコールを流す。

「その例の少年、何で部屋に入れたの?」

「やめて~、坊やの話は~」

「いいから言いなさいよ。真面目でお堅いさっちゃんが、な~んで他の男を入れたのか」
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