ボーダーライン。Neo【上】
あたしは小さく息を吐き、やがて諦め口調で「もぉいいや」と言った。
「そうそ、この際だから何でも言っちゃいな?」
口元を緩ませ、ツイと目線を上げる。
「じゃあ、コレは。暴露話」
「うん」
美波は楽しそうに、目を輝かせた。
「部屋で抱き締められた時。凄くドキドキしたの」
「そうなんだ?」
「うん。胸の奥がギュウッと痛くなって、どうしていいか。何て言ったらいいか分からなくて。凄く戸惑った」
あの行為は賭けに勝つための色仕掛けだったのかもしれないが、それがあたしの正直な気持ちだ。
「へぇ~。トキメキを感じた訳ね。いいじゃんいいじゃんっ! 高校生って言ったって、体はもう大人なんだから」
あたしは困った風に笑い、「その前にあたしは教師なんだって」と続けた。
そして隣りに顔を向け、美波を視界に入れる。
「高校の時。あたしが付き合ってたコウちゃん。覚えてる?」
「ん? 覚えてるよ? サチ、カッコい~カッコい~って夢中だったよね」
美波の台詞に、懐かしいなぁと笑みがもれた。
「最近。よく思い出すの、秋月くんを見てると。雰囲気って言うか、オーラみたいなものが彼と似てて」
「へぇ~」
「思い出すのはね。正確に言うと、あの頃の自分なんだけど。
毎日一生懸命、恋してた。だから気付かされる。惰性で付き合ってて、トキメキも何にもない今の自分に。それが何だか虚しくて」
共感できる部分があるのだろうか。美波は遠い目で呟いた。
「……もう二十五だもんね、あたし達」
アルコールに視線を注いだまま、あたしはコクンと頷いた。
「何かを決断するには。あまりにも重くて。
時間がかかる」
グラスの中で氷がカラン、と寂しげに音をたてた。
***
「そうそ、この際だから何でも言っちゃいな?」
口元を緩ませ、ツイと目線を上げる。
「じゃあ、コレは。暴露話」
「うん」
美波は楽しそうに、目を輝かせた。
「部屋で抱き締められた時。凄くドキドキしたの」
「そうなんだ?」
「うん。胸の奥がギュウッと痛くなって、どうしていいか。何て言ったらいいか分からなくて。凄く戸惑った」
あの行為は賭けに勝つための色仕掛けだったのかもしれないが、それがあたしの正直な気持ちだ。
「へぇ~。トキメキを感じた訳ね。いいじゃんいいじゃんっ! 高校生って言ったって、体はもう大人なんだから」
あたしは困った風に笑い、「その前にあたしは教師なんだって」と続けた。
そして隣りに顔を向け、美波を視界に入れる。
「高校の時。あたしが付き合ってたコウちゃん。覚えてる?」
「ん? 覚えてるよ? サチ、カッコい~カッコい~って夢中だったよね」
美波の台詞に、懐かしいなぁと笑みがもれた。
「最近。よく思い出すの、秋月くんを見てると。雰囲気って言うか、オーラみたいなものが彼と似てて」
「へぇ~」
「思い出すのはね。正確に言うと、あの頃の自分なんだけど。
毎日一生懸命、恋してた。だから気付かされる。惰性で付き合ってて、トキメキも何にもない今の自分に。それが何だか虚しくて」
共感できる部分があるのだろうか。美波は遠い目で呟いた。
「……もう二十五だもんね、あたし達」
アルコールに視線を注いだまま、あたしはコクンと頷いた。
「何かを決断するには。あまりにも重くて。
時間がかかる」
グラスの中で氷がカラン、と寂しげに音をたてた。
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