ボーダーライン。Neo【上】

「綺麗。……てか。檜って意外とロマンチストなんだ?」

 横目で彼女を捉え、そんなんじゃない、と呟いた。

「俺も人の受け売りだから」

「そうなんだ」

 果たして彼女は目的を遂げなくて良いのだろうか、と考え、うっかりため息をつきそうになった。

 仕方なく、僕から仕掛ける事にした。

「こうしてると落ち着くんだ」

「え?」

「もう。天井と睨めっこは飽きた」

 言いながら、上目遣いで茜を見つめる。

 茜は悲しそうに眉を下げ、キュッと唇を噛んだ。

 僕は続けて、大丈夫だよ? と穏やかに語りかけた。

「こんなの大した事じゃない。本当に疲れてクタクタの時は。気付いたら眠ってる」

「……だけど。心配だよっ」

 茜は手を伸ばし、思った通り、僕を抱き締めた。彼女の理性なんて、所詮はこんなものだ。

「前にも言ったけど。わたしは檜が好きだから、心配なんだよ?」

 知ってる、と内心で答える僕は、茜の心を弄んでいるのだろう。

 けど、それが妙に心地よかった。彼女の意図を知りながら、彼女を試す行動に出る。あくまでも僕が優位に立っている事こそが、僕を興奮させた。

「人の体温って。あったかいな」

「え?」

「なんか落ち着く」

 彼女に抱き締められたまま、瞑目した。

 程なくして、茜はじゃあ、と口にする。
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