ボーダーライン。Neo【上】
「よく出来ました」

 彼女は羞恥から真っ赤になった。

「‘それ’が目的で来たんだろ?」

 そのまま彼女とすれ違い、おいで? と声を掛ける。

 寝室のベッドまで、茜は迷う事なく付いて来た。

 そこで彼女を押し倒し、僕はその細い体へと覆い被さった。

 キスはしない。

 本当に好きな女じゃないとする気にならない。それが僕のルールだ。

 かつて、セフレ関係にあった水城 奈々を思い出した。

 奈々とも何度か体を重ねたけれど、結局は、最中に一度もキスをする事が無く、彼女に不満を抱かせた。

 僕は薄く笑い、上から順に唇を這わせた。

 淫らに感じる茜に、ただただ高揚感が増した。




「あ。ねぇ、檜?」

「ん?」

 ぼうっとした意識で、ベッドの背にもたれかかる。

 上半身裸のまま、吸い込んだ煙りを肺に送り、茜の背を見ている。

 着替え終わった彼女は、振り返り様、申し訳無さそうに言った。

「この間来た時。わたし、ピアス落として行かなかった?」

 ーーああ。

 僕は記憶を辿り、そのまま灰皿に煙草を置く。

 パチッと部屋の電気を点けた。

 瞳の作用が切り替わり、一瞬、目が眩んだ。

 クローゼットを開け、ごそごそ探していると、茜は背中越しにごめんね、と言った。
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