ボーダーライン。Neo【上】
◇ ♂
ああ、久しぶりだな。つか、こんな時間にいきなり電話して悪い。まさか繋がるとは思わなくて。
電話の向こうで、内田は感極まる自分を誤魔化すよう、早口で喋った。
『と言ってもちゃんと用件は有るんだけどな?』
嬉しそうに話す彼の後ろでは、女の声が響く。
勇介だけズルい! 奈々も檜と喋りたい、と。
その声を聞いて、さっきの不審な電話は奈々だったのか、と思い至る。
ソプラノの比較的高いキーで、且つテンションの高さを考えると奈々に違いないと思った。
「そっか」
言いながら僕は眉を下げ、苦笑する。そのまま立ち上がり、冷蔵庫へ向かった。
部屋の暖房で、実はさっきから喉がカラカラだ。
『つーか、掛けといて何だけど。この番号まだ残してたんだな?』
ああ、と頬を緩め、水の入ったペットボトルで喉を潤した。
「解約すんの忘れて。クローゼットん中に、置き忘れてた」
再びベッドに戻り、腰を下ろす。
内田は、マジかよ、と呆れて笑い、隣りにいるであろう奈々は、なになに? と慌てている。
やがてしびれを切らした奈々が彼から携帯を奪い取り、もしもし、と嬉しそうに言った。