ボーダーライン。Neo【上】
◇ ♀
「でね? 檜ってば携帯解約するの忘れて、そのままほったらかしにしてたんだって!」
「へぇ。そうなんだ?」
あたしは最早、自分に関わりのない人物と割り切って、水城さんの話を聞いていた。
今朝、水城さんから出勤の有無を確認するメールが届き、今日もお弁当屋さんにいるよ、と返すと、彼女は嬉しい報告があるから後で会いに行くね、と返事をくれた。
今は仕事の合間だ。
注文をするお客さんがカウンターに来た時だけ、水城さんは脇に避け口を噤む。
それ以外、つまり、お客さんが店内でメニューを見ている間などは、しばしば檜の名を口にした。
当然の事ながら、女性客は不審な目で彼女を見ていた。
「それで、昨日言ったクラス会なんだけど。二十五日のクリスマスに決まったの」
「クリスマス?? 何でまたそんな日に?」
あたしは目を丸くした。
おおよそのカップルや家族は、二十三日や二十四日のイブに祝うのかもしれないが。二十五日はクリスマス当日なのだ。
水城さん達のように、若い世代は集まりにくいんじゃないかと考えた。
それがね、と水城さんは含み笑いをして言う。