キミの世界で一番嫌いな人。
プロローグ




昔から人より体が弱くて、昔から人より病気がちで。

人よりちょっとだけ走ることができなくて。

病院の匂いは誰よりも知っていて。
CTR検査にも慣れっこで。


自分の心臓がちゃんと動いてるのは、誰かの力があったからで。



「よし、順調みたいね。どう?だいぶ成長に連れて走ったりできるようになったんじゃない?」


「もうピンピンだよ、ありがとうコーちゃん」



グッと親指を立ててニコッと笑う。

昔からの主治医である女医は困ったように笑った。



「“コーちゃん”はやめなさいって言ってるでしょ」


「えー、なにを今さら」


「青葉(あおば)も来月から新しいとこなんでしょ?転校先では上手くやっていけそうなの?」



心臓の中にある4つの窓のうち、ひとつでも欠けていると。

一見正常に機能していたとしても体は追いついてはくれない。

走れば苦しくなって、普通の風邪でも命取りで入退院が多くて。


10歳までの私は、そんな毎日を過ごしていた。



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