キミの世界で一番嫌いな人。
episode.2
***
広い病院は少年にとって、お城のように思えた。
真っ白な見た目、真っ白な院内。
どこよりも綺麗で、ガーデンテラスのような場所もあって。
レストランや売店まで。
『家より全然こっちのほうがいい…、』
ランドセルを背負った少年は、ぽつりとつぶやく。
『ここは怪我や病気をした人がたくさんいるのよ。そうじゃなく生きれているあなたは、とっても幸せなの』
そんな少年の腕を引きながら、祖母と思われる女は優しく笑った。
ここには俺よりもずっとずっと苦しんでる人がいる。
父と離れて祖母の元に預けられて、辛いことや悲しいことがたくさんあった。
でもそれはちっぽけなんだって。
『理久…、来てくれたのか』
とある一室に向かえば、ベッドに横たわる父親は上半身を起こした。
足にはこれでもかと言うくらいに包帯がぐるぐる巻きにされている。
見ているだけで痛々しいが、父親は少年を見ると申し訳なさそうに目を伏せた。
『…こんにちは、お義母さん』
ベッド脇の椅子には、1人の女がいて。