キミの世界で一番嫌いな人。
『娘の1つ上でしたか。今後とも仲良くしてくださいね』
『…こちらこそ…よろしくお願いします、』
父は頭を下げる。
この男は誰なのか、父の知り合いなのか。
それくらいしか興味が湧かない。
空気感と、自分を見つめてくる眼差しがどこか怖かったから。
少年は祖母の腕を引っ張って『帰りたい』と、合図をした。
『こらっ!走っちゃだめって言ってるでしょ!また発作になったらどーするの!』
『コーちゃん!だって今日は綺麗な夕暮れだよ!お外を走りたいもんっ!!』
『…明日一緒にお散歩するから、今日はお部屋に戻ってお勉強!』
『えー』
折り紙や絵が飾られた病室から出てきた、ひとりの少女。
キラキラ輝く窓の外を羨ましげに見つめて立ち止まったとき、女の先生に捕まえられてしまった。
『コーちゃんは私のこと嫌いなの?どうしていつもいつも駄目って言うの…?』
『…馬鹿ね、大切だからに決まってるでしょう。あなたが産まれたばかりの頃から見てるんだから』
『あははっ!コーちゃんお母さんみたい!』
『…そうよ。だから言うことを聞いて』
祖母の言ってたことを思い出した。
この子も病気や怪我をしているのかな…。
その服は入院している人が着るようなものだから。
『あなたは心臓に負担をかけちゃだめなの。それに、手術も控えてるでしょう?』
『手術が終わったら…走れるようになる…?』
『…ええ、なるわ』