キミの世界で一番嫌いな人。
まさかそんな少女へと与えられる心臓は、少年のものだとは知らずに。
少年の心臓の一部が、少女に渡されるとも知らずに。
『ふふ、元気で可愛らしい子ね』
『…うん』
すごく可愛い子だと思った。
病気だとは思えないくらいに元気で。
だからこそ少年は、少し勇気をもらった。
世の中にはもっと辛い思いをしている人がたくさんいる。
だから俺だって、大丈夫なんだって。
『こんにちは!』
ふと、その女の子は俺を目にして駆け寄ってくる。
ニコッと笑って、キラキラ弾ける笑顔で挨拶をしてくれた。
『あなたもここの病院の子なの?何号室?今度一緒に遊ぼう?』
『…俺は、お見舞いに、』
『そうなんだ!また来てくれる?折り紙とか好き?』
初対面なのにどうしてこんなにもポンポン言葉が出てくるのか、少年はどこか不思議だった。
でも声をかけてくれたことが楽しくて嬉しかった。
『あっ、コーちゃん!私いまお友達と───わっ!コーちゃん待ってよ…!』
先ほどの女医が少年に気づくと、よそよそしく動揺しながら少女の腕を引っ張って行ってしまった。
なんだったんだろう…?
そんな疑問は嬉しさに溶けてしまう。
『あら?理久、顔が真っ赤よ?』
『…!!』
『理久はああいう子が好きなのね』
『ち、ちがうっ!!』
なんて、それが少年の初恋とも知らずに───。