キミの世界で一番嫌いな人。
「…離せよ、嫌がってんだろ」
背中からかかった声。
思わずビクッと、肩が飛び跳ねた。
「藤城サンもデート?」
「ちがう」
どうしよう、目が合わせられない…。
約束を破ってしまった……、
早く男に戻らなきゃ。
妹という設定で上手くこの場を乗りきったら、すぐにでも。
「あ、そうだ。そういえば俺まだあんたの名前聞いてないよね?名前なんて言うの?」
……楽しんでる。
こいつ…ぜったい楽しんでる。
私はそれどころじゃないのに。
肩に手回しちゃってるし、アッキーはこういう奴だとはもちろん知ってたけども!
「名前は…秘密です…、」
「またそれ?」
適当にも言えないし、本名を言うことなんかもっとだめ。
っていうかアッキーは青葉だってわかってるくせに。
「じゃあ適当に呼んでいいってこと?サチコちゃん?」
……誰だよそれ。
適当にも程ってもんがあるでしょ、アッキー。
ほんとタチが悪い。
すごく厄介な弱味を握られてしまった。
「…お前ら、知り合いなのか」
「あー、俺がナンパした子がまさかのチビの双子の妹?だっけ?まぁ、そんな感じで」
修学旅行のとき、アッキーにもサラッとそんなこと言ったっけ。
なんとか辻褄が合ってくれて助かった…。