キミの世界で一番嫌いな人。
アッキー、もうそれ以上なにも言わないほうがいい。
だって先輩、めちゃくちゃアッキーを睨んでる。
というかアッキーもアッキーでそれを知ったうえで楽しんでる。
「あのっ、私…っ、藤城さんのことが好きです…!」
爆弾発言は私の目の前から。
しーんと静まり返ったところで、立ち上がったのは隣にすわる友達。
「…俺たちお邪魔じゃない?そろそろ移動しよっか、妹ちゃん」
「う、うん」
アッキーの腕に引かれるまま、校舎へと戻った。
付き合っちゃうのかな…。
先輩もとくに何も言ってなかったし。
否定もしてなかった。
それに……意外とお似合いだった。
「なに泣きそうな顔してんだよ」
お前らしくないよチビ───と言って、手が離された場所は屋上。
いつもは先輩がいるはずなのに、今はフェンス越しに覗く距離。
「藤城サンが来てからずーっとそんな顔だし。どうしちゃったの」
どうしちゃったんだろう……、わからない。
でも胸が、痛い。
あの2人を見てると痛い。
それに女の姿だと、夏祭りのときの先輩の苦しそうな顔ばかりが浮かんで嫌だ。
私は彼にあんな顔しかさせられないのが、いちばん嫌だ。
「…アッキー…、前に、“俺は先輩に嫌われてる”って言ったの覚えてる…?」