キミの世界で一番嫌いな人。
いつも先輩が座っているベンチに腰かけて「覚えてるよ」と、小さくつぶやくアッキー。
私は屋上から見える景色をじっと眺めた。
「嫌われてるのは“俺”じゃなくて…“私”なんだ…、」
そしてゆっくりと振り返る。
私、どんな顔してる…?
泣きそう?それかもう泣いてる…?
「私なんだよ、アッキー。…私は先輩に会っちゃだめで……顔を見せちゃだめなんだよ…、だから男になった」
サラサラと揺れる黒髪の隙間から垂れ下がった、ピアス。
同じように揺れてキラキラ光を放っていた。
「アッキー前に…先輩を殺してくれる?って、“俺”に言ったよね」
「言ったね」
「わあ覚えてたんだ」と言った彼は、笑っていなかった。
特別な感情があるからか、それとも話の続きを早く聞きたいからなのか。
「…もう、叶ってるんだよ」
これは私の問題だから言わないって決めてたのに、こうも呆気なく話してしまうなんて。
さすがに冗談ではない空気感だと察すると、アッキーは目を開いてピクッと反応した。