キミの世界で一番嫌いな人。
「…私…走ります、藤城さんのぶんまで走ります…っ、」
「…転ぶなよ」
「はい…っ」
お前の兄貴と重なって見えた。
双子の兄妹なんだから当たり前でもあるけど。
でもおかしい。
だって、まったく同じに見えたから。
「私…そろそろ帰らなきゃ……、」
そっと腕を離した。
俯くそいつは、やっぱり俺の目をしっかり見てはくれない。
そりゃ俺だってあんなにひどいことを言って、ひどいことをしたから。
「───…お前のことなんか、大嫌いだ」
最後までそう言った俺に、名前も知らない女はコクンとうなずいて。
泣きそうな顔をしながら駆けてゆく。
「───藤城さんっ!」
小さくなるまで見送ったあと、今度は違う声に呼び止められる。
有沢 夏実(ありさわ なつみ)。
あの合コンの後日だったか。
校舎前に待ち伏せをされて、無理やり連絡先を聞き出されて。
それから毎日メールが来て、とくにそこまで返信はしてなかったというのに。
“今日の文化祭、行きますね”と、それが最新のメール内容。
「…まだ帰ってなかったのか」
「やっぱり私……諦められなくて…、」