キミの世界で一番嫌いな人。




「…私…走ります、藤城さんのぶんまで走ります…っ、」


「…転ぶなよ」


「はい…っ」



お前の兄貴と重なって見えた。

双子の兄妹なんだから当たり前でもあるけど。


でもおかしい。
だって、まったく同じに見えたから。



「私…そろそろ帰らなきゃ……、」



そっと腕を離した。


俯くそいつは、やっぱり俺の目をしっかり見てはくれない。

そりゃ俺だってあんなにひどいことを言って、ひどいことをしたから。



「───…お前のことなんか、大嫌いだ」



最後までそう言った俺に、名前も知らない女はコクンとうなずいて。

泣きそうな顔をしながら駆けてゆく。



「───藤城さんっ!」



小さくなるまで見送ったあと、今度は違う声に呼び止められる。


有沢 夏実(ありさわ なつみ)。


あの合コンの後日だったか。

校舎前に待ち伏せをされて、無理やり連絡先を聞き出されて。

それから毎日メールが来て、とくにそこまで返信はしてなかったというのに。


“今日の文化祭、行きますね”と、それが最新のメール内容。



「…まだ帰ってなかったのか」


「やっぱり私……諦められなくて…、」



< 148 / 340 >

この作品をシェア

pagetop