キミの世界で一番嫌いな人。
別に生理的に無理というわけではない。
とくに害も無い。
だけど俺はまったく興味がなかったから、告白は断った。
「どうして、私じゃ駄目なんですか…?」
眼鏡の先は泣いているようだった。
「好きな人がいるんですか…?藤城さんが私のことを好きじゃなくても、それでも友達からでもいいんです…!」
好きな人……。
そう言われて脳内に浮かんだのは、病院で声をかけてくれた女の子で。
ちがう、あんな奴じゃない。
俺はあいつが大嫌いだ、大嫌いなんだ。
「…俺は誰ともそういうのはしない」
「その理由が知りたいんですっ」
「お前に話してどうなるんだよ」
少し強めに言うと、また泣き出す。
かと言ってあいつにしたように抱き締める気はまったく起きなかった。
「藤城さん…っ!さっきの女の子のことが好きなんですか…?」
「……」
「…そう…、なんですか…?」
そのまま背中を向ける。
なにも言えなかったのは、ちゃんと理由がある。
大嫌いだと、そう言ったところでこの女には通じない言葉だからだ。
「あの人とはどういう関係なんですか…!!」
「うるせぇんだよ。もう俺には関わるな」
「っ…、私っ、諦めませんから…っ!」
たぶん俺は、女にはこういう言い方しかできないんだろうと。
つくづく思った。