キミの世界で一番嫌いな人。
秋斗と理久
「おっはよー!青葉ちゃーーーん?」
「ぎゃははははっ!!」
ザバーーーンッ!!
校舎前、縄のようなものに躓いたかと思えば、頭上にセットされていたバケツがひっくり返る。
髪からポタポタと水が滴った。
「……真水だ…、」
途端に襲ってくる寒気。
今は冬だから、このままだと余裕で風邪を引いてしまう。
“小鳥遊 青葉は女”
“男好きのアバズレ”
“性転換女”
なんて貼り紙を剥がしながら、教室へと向かった朝。
あれから案の定、学校中には女の文字で書かれたであろうそんなものが貼られて。
面白がった生徒たちは私の身ぐるみを剥がそうと追い回し。
正面からはなくとも背中から蹴られたり、割り箸で作ったパチンコを当てられたり、ボールを投げつけられたり。
それくらいで済んでいる理由は、いつも傍にいるナンバー2のおかげ。
そうやってなんとか生きている今日。
「うわ、本当に鳥の行水じゃん」
「ぜんっぜん上手くないからっ!着替えてくる!」
大体アバズレってなに!!
夏実ちゃんが考えたならそっくりそのまま返したいくらいだ。
ベタすぎるでしょっ、こんなやり方!!
「…っくしゅんっ!」
やばい…。
そりゃ真冬に早朝から水を被れば、こうなることなんて大体は予想つく。