キミの世界で一番嫌いな人。
2人のキス
冬休みになった。
あれからいじめはじわじわと続いていたけど、先輩やアッキーのおかげで前ほどでは無くなって。
ここで身体をしっかり休ませて、休み明けに備えよう。
『話があるの。今日、あんたの家に行くから』
どこで私の連絡先を知ったのか、スマホにかかった着信先は夏実ちゃん。
彼女がまだ先輩にすべてを話していないことだけが唯一の救い。
『女として待ってなさいよ。じゃなかったら許さないから』
もう大人しい眼鏡の女の子はどこにもいない。
まるでゴミを見つめるような扱いで、私も逆らえないから言うことを聞くしかなくて。
当たり前のようにウィッグを被る今日。
「お願いアッキー、力を貸して」
そんな思いを込めて、アッキーからプレゼントされたワンピースに袖を通した。
女だったときに着ていた服はクローゼットのずっと奥にしまいこんでいたから。
いちばんサッと出せるのは、このワンピース。
ザァァァァァァ───…。
「雨…、」
さっきまで晴れてたのに。