キミの世界で一番嫌いな人。
突然の雨だ。
通り雨、というよりは。
雲もどんより広がって、昼間だとしても暗くなってしまった。
このまま夏実ちゃん、Uターンしてくれないかなあ…。
なんて思っても、しばらくしてインターホンが鳴る。
そんな先に映し出されていたのは。
「…え、ど、どうしたんですか!」
モニターの先にいる、びっしょりと雨に濡れた栗色。
『…どうしたって。お前が呼びつけてきたんだろ』
呼びつけてない。
私は夏実ちゃんが来るっていうから待ってただけだ、女の姿で。
『……さみぃ…、』
雨のなか走って来たらしい先輩は、見るからにずぶ濡れ。
すぐにオートロックを開けて、玄関に出迎えた。
案の定、女の私を前にして驚いていた。
「…兄貴はいねぇのかよ」
「る、留守にしてて…、」
「は?あいつが俺に話があるっつーから。……あの野郎」
あの野郎って…。
それは私のこと…?
それとも夏実ちゃんのこと…?
それより、とりあえずシャワー浴びてもらわなきゃ。