キミの世界で一番嫌いな人。
「…良かったよ。お前が走れるようになって」
「え…?」
「お前、走りたいって言ってたから」
柔らかい声だった。
私を責めているわけでも、怒っているわけでもない。
だから私も隣に立つことができた。
「藤城さんには感謝してもしきれなくて…、謝っても謝りきれないです、」
「…もういい。いろいろ悪かった」
2回目だ。
この人が私に謝ってくれたのは。
でも今の私は、この人の口から聞いたのは初めてだっていう設定でいかないと。
「…そのワンピース気に入ってんのか」
すると彼はつまらなそうに私を見つめた。
とくに気にしていないようだけど、きっと会話を続けたかったんだろうなって。
そんな空気感。
「あっ、えっと、秋斗くんからもらったんです。バッグや靴もセットだからびっくりで、」
それに、大事にしないと殺すって言われたし…。
何よりこのワンピースは胸元がしっかり隠れるから傷口を隠すことができる。
だから気に入ってるっちゃ気に入ってて。