キミの世界で一番嫌いな人。
背中を押さえられているから動けない。
顎も固定されてる。
何より今まで友達だと思っていた存在が、こうして私に唇を重ねてるなんて。
……男同士だと思っていたのに。
だからこそ、驚きが大きかった。
「───…お前の言い付け、守ったよ俺」
唇が離れると、聞いたことないくらいの甘い声でそう言ったアッキー。
なにがなんだか分からないから、返事すらできない。
言い付け……?
私、なにか言ったっけ…?
「…こーいうのは好きなヤツとしろって」
言われた通りしましたけど、って目で見られても。
確かに私はそんなことを言いましたけども。
いやいやいや……。
………え。
「……そっか、アッキーってやっぱりホモなんだ……、」
「…お前ほんとそーいうとこだよ」
なぜかため息を吐かれてしまった。
だってアッキーは私のこと、男だと思ってくれてるわけで。
確かに男同士って、こういうふうにふざけたノリでキスとかするって聞いたことあるけど…。
「アッキーの言う“そーいうとこ”って…、なに…?」
ずっと気になっていた。
いつもそーいうとこそーいうとこって。
どーいうとこ?って感じだ。
「馬鹿みたいに純粋で可愛いってこと」
アッキーは雨のなか、初めて見せる顔をして笑った。