キミの世界で一番嫌いな人。
episode.3

***





目が覚めたとき、変わらない点滴の感覚とベッドの匂い。

そんなものはもう慣れたものだった。


ただ、心臓のドクドクという音は、その日はしっかり耳に入ってくるところが違っていて。



『ねぇコーちゃん。どうして私の心臓は急に治っちゃったの?』



ずっとしたかったことが、できるようになった。

走っちゃだめと言われていたのに。
逆に今は走る練習をしようか、なんて。

おかしいと思った。


手術をして治せるのなら、どうして今まで治らなかったのって。



『…ヒーローが青葉に命を吹き込んでくれたのよ』


『ヒーロー?』


『…そう。とても優しい、勇気ある少年』



ヒーローは少年なの…?

そんな疑問を少女は抱いた。



『…可哀想に。その子の意思は聞いてないんですって』


『ええ、だって11歳でしょう?さすがにその権利はあるんじゃないかしら』


『…親同士が勝手に決めたって噂よ』



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