キミの世界で一番嫌いな人。
凛って普段は男勝りなのに、イケメン好きの面食いだ。
乙女な部分がある女の子。
だから今も瞳をキラキラさせてるんだろう。
でも寒いし、私は早く帰ってこたつでぬくぬくしたい。
裏門を通って帰ろうっと。
「あぁ、いたいた」
女子の塊から聞こえた声に、思わず立ち止まった。
ありえない、今の声がここに聞こえることは絶対ありえない。
そんなこと、あってはならない。
だからこそ悪寒が止まらない。
「ずいぶん芋っぽくなったね、お前」
道が開くと、その先から歩いてくる黒縁メガネがひとり。
それ伊達メガネって知ってるんだからね私。
芸能人の休日、みたいな雰囲気出して格好つけちゃってさあ…。
そこらの芸能人より様になってるから何も言えないんだけども。
───というか。
「ひ、人違いなんでっ!!!」
なんでここにいるの廣瀬 秋斗……!!!
「は?逃げるの?もう逃がさないよ俺」
凛の腕を振り払って、全速力。
迷うことなく校舎へとUターン。
関係者以外は立ち入り禁止。
だからさすがに入って来れないだろうと。
「スカートそんな長いのお前だけじゃない?てか止まれよ、パンツ見えるよ?」
そんな常識が通じる奴じゃなかった、そうだった。