キミの世界で一番嫌いな人。




たぶんバレてはいないんだろう…けど。

はやく来て秋斗くん…!
いろいろ大変だから…!!



「てか可愛いねえ、名前なんて言うの?」


「ここはオオカミしか居ないから食べられちゃうぞー」



がおー、なんて言ってはギャハギャハ笑ってる。


こういうとこ、相変わらずだ。
久しぶりって感じだ。

小鳥遊 青葉って名乗れば、なんとなくバレてしまうかもしれないから、さすがにそれは言えない。



「───人のカノジョに何してんの?」



目の前の男がひとり、声も出さずに視界から消えた。


その男が地面に突っ伏してしまったのは、容赦なく背中から蹴りを食らわせられたからで。

新たに現れた男子生徒を前にすると、数人はあっという間に悲鳴を上げて去って行ってしまった。



「秋斗くん…!」



良かった…。

ビデオ通話でいつもそう呼んでいたから、ちゃんと実践でも発揮できた。


もしかしたらアッキーって呼んじゃうかもしれないって不安だったけど…。

私の今の格好も、ちゃんとそこは弁えてくれているらしい。



「ごめんね遅くなって。なーんか担任の話が長引いちゃってさ」


「ううん、私もいま来たところで」


「あれ?教室からずっとキョロキョロしてる可愛い子が見えてたけど気のせい?」



< 255 / 340 >

この作品をシェア

pagetop