キミの世界で一番嫌いな人。




うっ…、そんなお決まりのセリフさえも見抜かれてしまうなんて。

でも久しぶりの制服姿だ…。

友達だった頃と変わってなくて、少しホッとした。



「青葉ちゃん」



こうして彼氏と彼女というものになってから顔を合わせるのは初めて。


あのとき私の学校に現れて、彼はそのまま帰って行って。

そしてそういう形になったのだと実感が湧いたのはそのあとだったから。



「抱きしめてもいーい?」



両手を広げて笑う秋斗くん。


抱きしめるって……、ハグだ。

あのときも理科準備室でそうされたけど……ここ、外です。



「ここ外だから…!誰か見てたらっ」


「ごちゃごちゃうるさーい」


「きゃっ…!」



ぐいっ、ぽすんっ。

ぎゅっと、頬を寄せるように首筋に顔を埋められる。



「はーー、…会いたかったよ青葉ちゃん」


「…うん、…わ、私も、」


「……やばいんだけど俺」


「や、やばい…?」


「にやけすぎてやばいってこと」



香水の匂い。

さらっと触れる、黒髪。



「…リップ、かわいーじゃん」



あ、気づかれてた…。


「廣瀬さんに会うならさすがにそれくらいしなきゃ!」って、クラスの女子全員から言われて。

慣れないなかでも付けてみたり。



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