キミの世界で一番嫌いな人。
「…青葉ちゃん。そんな悲しそうな顔してると、ほんとにしちゃうよ俺」
「あきと、くん、」
「慰めるつもりではしたくないけど、それで俺を見てくれるなら……俺はする」
ちがうの、秋斗くん。
私ね、今日すっごく楽しかったんだよ。
あなたしか見てないよ、今の私は。
「わ、私っ、チェリーだから…!!」
ピタッと、動きが止まった。
というか私はもう女じゃないから、いろいろおかしい。
自分でもこんがらがってる。
でも覆い被さってくる秋斗くんを前にしたら、なにがなんだか全然わからなくなって。
「…俺はそれは逆に嬉しいけど」
ムッと口を尖らせると、空気はどこか柔らかいものに変わる。
くすっと笑った秋斗くんは、甘いキスをそっと落とした。
「でも覚えてない?俺がもらってあげるって言ったの」
………あ。
一生それでいいって言った私に、冗談混じりにそんなことを言ってたっけ…。
───そんなとき。
「失礼しまーす。イチゴパフェお持ちしましたー」
悲鳴のような叫び声は、カラオケボックスの一部屋から。
マイクなんか通さなくても十分。