キミの世界で一番嫌いな人。
今も隠すように咳をしているし。
湊川の頂点がこれじゃあ笑い者だよ。
そろそろ俺に交代じゃないの?
でも、この男にはここで死なれても困るんだよ。
「なんで俺にあの子の居場所を教えたの?」
あんなに睨むくらいなら、あんなに拳を握るくらいなら。
そんなの俺に教えなければ良かったのに。
祖母の家にいる、なんてさ。
それを教えられなかったら、俺は今でも「チビー」ってたまに言いながらスマホを眺める毎日だったというのに。
「別に。…深い意味はねぇよ」
「ならもう、そのままくたばれよ」
やっと言えた感があった。
ここにきて、やっとだ。
ベッド脇の椅子に腰かけながら、ぐっと固く握ったこぶし。
「…って、思ってたよ。ずっと」
俺、本当は悔しい。
青葉ちゃんの中には今もずっとこいつがいる。
心臓を移植、なんて。
だからなんだ、それだけじゃんって思えればラクなんだろうけど。
「俺、あんたのことはずっとずっと殺したいくらいに恨んできた」
母さん奪って。
親戚の元を抜け出した俺の前に、あんたは俺の母親と楽しそうに笑ってて。