キミの世界で一番嫌いな人。
あんたの顔を見る度に、そのときの情景が嫌なくらい脳裏に浮かぶ。
あんたの声を聞くたびに、母さんの言葉が俺を刺してくる。
だから今すぐにでも殺したいって、ずっとずっとそう思ってたけど。
「でも、こんなとこで死ぬなよ。俺に殴られるまでは……死んでくれるなよ、」
俺たちはさ、たぶん。
もし違う未来があったら、もし俺の母さんとあんたの父親が真面目でとても優しい大人で。
俺たちのことを大事にしてくれるような人間だったとしたら───…
「…死なないでよ、“チビ”のためにも」
「……、」
あいつ可愛いよ。
俺のこと、一生懸命好きになってくれようとしてさ。
秋斗くん秋斗くんって言って。
「…お前が居てくれて良かった。ありがとう廣瀬」
あーあ。
俺、なに普通にいいヤツになっちゃってんだろ。
ねぇチビ。
お前が言ってくれたとおり、俺ってやっぱりいいヤツだよね。
「青葉を、…頼む」
青葉、なんて。
なに人のカノジョ気安く呼び捨てにしてくれちゃってんの。
相っ変わらず腹立つなあ。