キミの世界で一番嫌いな人。




彼氏と彼女になってから、アッキーは私をそう呼ばなくなった。


でも、今。

彼は私をそう呼んだ。



「お前あれだよ?廣瀬 秋斗を振るとか、世のオンナを敵に回してるからね」



“お前”───…。


アッキー、私…、いや、俺ね。

アッキーに“お前”って呼ばれるのすごい好きだったんだよ。


なんか、本当に兄貴っていうのかな。

呆れたように笑ってくれるから、その瞬間にすごい安心がぶわっと生まれる。



「アッキぃ…っ、」


「うわ、本当ひっどい顔。そんなときはどーするんだっけ?…チビ」



じゅるるるる───。


鼻水を吸い込んで、そして。

ごっくん!



「飲み込んだ!」



するとアッキーは私に近づいて、最後にちゅっと優しく唇を合わせた。




「お前ほんと、そーいうとこ」




アッキーだ。

俺の親友の、アッキー。


この先もこの男とはずっとずっとこうして続いて行くんだろうなって、本当に思う。



「ありがとアッキー!俺っ、行ってくる…!」


「ちょっ、おまえ鍵どーすんの!は?おい馬鹿!」



馬鹿って、直接的すぎるよアッキー。



「俺の鞄のポケットに入ってるから閉めといて…!」


「お前ほんと俺以外にやるなよ、そーいうの」


「当たり前だろ!」



だってまた何度だって会えるし。

そのときに鍵は返してもらえればいい。



「───チビ!」



玄関先で振り返る。

ニッと笑ったアッキーは、こぶしを突き出した。



「頑張れ、チビ」


「───おうっ!!」



グッと、同じように握る。

アッキーは誰よりも信頼できる、俺の最高のトモダチで、親友だ。








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