キミの世界で一番嫌いな人。
理久side




目が覚めたとき、胸が軽くなって、迫り来るような圧迫感も無くなっていて。

点滴も少なくなっていて。


まるで今まで苦しめていた何かがスッと身体から抜けていったみたいに。



「具合はどう?」


「…だいぶラクです、」


「そう、良かったわ」



“小谷(こたに)”とネームの入った名札を付けて病室に入ってきた、ひとりの女医。

慣れた様子でカーテンを開ける姿は、かなり前からここの医者をしているかのような雰囲気だ。


どこかで見たことがあるような気がした。

……気のせいか。



「…俺、どうなったんですか、」



数日前、意識を手放すほどの発作と吐血に襲われた。

ベッドを取り囲む数人の名医の冷や汗に、俺はもうこれで死ぬのかと思っていた。


それなのに目が覚めた今、身体はスッキリしているから。



「……ヒーローがね、ヒーローを助けたのよ」


「…は?」



なんだそれ。
本でも聞いたことねぇよそんなの。

猫の恩返しじゃなく、ヒーローの恩返しってか。



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