キミの世界で一番嫌いな人。
“ふじしろ りく君へ。”
そんな、書き出し。
たぶん俺の名前は漢字では書けなかったんだろう。
だからせめて、“君”だけは漢字で書いたのだ。
10歳のあいつは。
「1度、あなたの噂が院内に回ってしまったことがあったの。そのときにいろいろ聞いちゃったらしくて、」
ふじしろ りく君、ごめんなさい。
私のために同じびょうきにさせてしまって、ごめんなさい。
「…こんなことになるなら私はこのままで良かったって、あの子言ったのよ」
私をうらんでください。
私をゆるさないでください。
私も、自分をずっとうらみつづけます。
でも私はいま、あなたのおかげで走れるようになりました。
青い空も夕日も見れます。
「ねぇ藤城くん。謝罪の先って、なんだと思う?」
「…謝罪の、先…?」
「えぇ、あの子が私に聞いてきたの。あんなの初めてだったから、私つい考えずパッと答えちゃったわ」
ふじしろ りく君、
あなたは今、走れますか?
それとも私のせいで走れませんか?
もし、あなたが走れないのなら。
私のようになっているのなら。