キミの世界で一番嫌いな人。
私にはずっと会いたい人がいる。
名前しか知らなかった男の子。
10歳の冬、雪が降る夜、私は彼に命をもらった。
その日から私の心臓はちょっとだけ普通に近づいて。
今ではごくありふれた日常を過ごせるくらいには。
「私…、いや、“俺”。男になるんだよコーちゃん」
「…またお父さんの命令?」
「ううん、これは俺が決めたこと」
その町の有名な男子校。
そこに、彼がいる。
金髪とまではいかないけれど、明るい栗色の髪をしてハーフのような顔立ちの男の子。
私に命をくれた男の子。
彼に会ってみたい、お礼が言いたい、なんてものは建前だった。
本音は───…
『その人に私は命をもらったけど、私はその人の命を奪ったってことでしょ…?お父さん、あなたは最低だよ』
いちばん最低なのは私だ。
自分の心臓の4つの窓を完全に埋めておいて、その男の子の4つの窓を3つに減らしてしまったのだから。