キミの世界で一番嫌いな人。
エピローグ
「このお薬飲まないと病気は治らないのよ?」
「いやだっ!それ飲むくらいなら治らなくていいっ!」
「あっ、待ちなさい隼人くん!走っちゃだめよ!」
ダッ!と、おれは駆け出した。
毎日毎日苦い薬を飲ませてくる看護師なんか、悪魔だった。
病気なんか、治らないのに。
「まーた抜け出したのか、お前」
「あっ、先生!」
でも、この先生だけは特別だった。
院内のガーデンテラスにうずくまるおれの隣に腰かけた、ひとりの若い医者。
医者って感じがしないし、とても格好いい人だから、おれもすごく好きだった。
それに薬だって無理に飲ませない。
おれの“しゅじい”ってやつらしいけど。
「おれの病気なんか治らないよ。いつまで経っても外を走れないし…、」
もう嫌だ…と、うずくまった膝に顔を埋めた。
先生は何も言わず、手にしていたお弁当を隣でパカッと開ける。
「わあっ!今日はライオンの模様!」
「すげぇだろ」
「おれにちょーだい!このタコさんウインナー食べたい!」