キミの世界で一番嫌いな人。
その主治医が広げる持参のお弁当は、いつもキラキラと輝いている。
海苔で型抜きされたキャラクターがご飯の上に敷かれていて。
定番と言うように必ず入っているのは、タコの形をしたウインナー。
目までちゃんと付いていて、「たまに取れちまうんだこれ」と言って先生はいつも笑っていた。
「これは俺のだ」
「いーじゃん!ケチ!」
ペチッと、軽く額を叩かれる。
どーせ先生はいつもこのキラキラしたお弁当食べれるんだから、今日くらい譲ってくれたっていいのに…。
あいさい弁当?だっけ。
よく看護師の女は「羨ましいなぁ」なんて言ってるから、覚えてしまった。
「じゃあ薬、ちゃんと飲むんなら特別に譲ってやってもいいぞ」
「え!本当!?おれ飲む!!」
「約束な」
「うんっ!!」
パクっと、口に運ばれたウインナー。
すぐに頬が緩むくらいに幸せな気持ちでいっぱいになる。
そして他のおかずも分けてくれる、ぶっきらぼうだけど優しい主治医。
「お前は必ず走れるようになるよ」
先生はそう言って、おれの頭をわしゃわしゃと撫でた。