キミの世界で一番嫌いな人。
夏休みとなって帰省した私。
今回は大好きな2人に会えるからと、ウキウキワクワク浮かれた結果これだ。
「えっ、待って!電話切らないでコーちゃんっ!」
『もう休憩終わるのよ!自分でどうにかしなさい!』
「切ったら私は遭難するよ!?コーちゃんいいの!?」
『するかっ!』なんてツッコまれながら、ながーいため息がまた聞こえた。
それでも電話を切らないでいてくれる主治医。
検診のあとにそのまま直行した今、さっき会ったばかりなのに恋しくなる始末。
「───っ…!」
そんな私のうしろにできた影が、ひょいっとスマホを奪う。
耳に当てて「解決しました。問題ないです」とつぶやき、ピッと切った存在。
「良かったな。遭難が免れて」
「せ、せんぱい…っ」
「ずいぶん遅ぇからこんなことだろうと思った」
カジュアルかつシンプルな首元緩めなTシャツ、クシャッとなった余裕ある黒パンツ。
皮製のレザー生地のネックレスがこれまたお洒落につけられていて。
左腕には黒色の腕時計。
変わらない栗色に、左耳のピアス。
か、格好いい……。