キミの世界で一番嫌いな人。




「アッキーのは秋冬にちょうど良いから、その季節に着るよ!」


「着なくていい。あれはもう十分着ただろ」



案の定、答えたのは先輩。



「でも大事にしないと殺されちゃうから…、」


「殺さないよお前だけは。お前が居なくなったら困るし俺。
でも、そーいうことならまた新しいの買ってあげるね」


「いらねぇよ。俺がこの先もずっと買うから問題ない」


「は?チビの好みはたぶん俺のほうが知ってるから。俺のがセンスもいいし」



板挟みだ。

どっちの言い分も分かるからこそ、この瞬間がいちばん困るしめんどくさい。


彼氏も大切だし、親友も大切なのだ。



「いいかげんお前は親友離れしろよ」


「残念でした。俺とチビはずっと離れないって、前にこいつが言ってくれたことがあってさ」



そんなアッキーの一言に、先輩は眉をひそめるようにして私を見つめた。

思わず苦笑いを決めこんで、スッと逸らす。


「…あとで覚えとけよ」と、小さく聞こえた言葉は聞こえなかったことにしたい。



「あ、そうそう。チビ、今日お前に特別ゲストがいるんだけど」



アッキーが思い出したかのように言ってくれたことで、話題と空気感は自然に変わった。


特別ゲスト…?


首を傾げると、アッキーは覗き込むように目線を合わせてきた。



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