キミの世界で一番嫌いな人。
「小鳥遊、ここの問4を解けるか」
「………え。」
結局先生だって、いちばん真面目な私を当ててくる。
そりゃあ他の奴らなんかプリントで紙飛行機なんか作って飛ばして遊んでるけどさ。
隣の廣瀬 秋斗は今日も居眠り───は、していないようだ。
「先生、たまには廣瀬くんを当ててもいいんじゃないですか…」
毎日毎日私ばっかり当ててきやがって…このハゲ。
私の頭はそこまで悪くなければ良くもないけど、数学だけは大の苦手だった。
「廣瀬はなあ…」
どうせあれでしょ、先生も“アキ”は怖いんでしょ。
もしかしたら残りの生えてる髪の毛むしり取られて、気づいたら代わりにワカメとか乗せられてそうだもんね。
……なんだそれ。
「別にいーけど。問4だっけ」
なんて思っていると。
ガタッと立ち上がって黒板に向かって、チョークを持ってはスラスラ書いてしまうアッキー。
その滑らかな動きは計算式を解いてるようには見えなかった。
「チビ、仕返しのつもりなのか知らないけど残念だったね」
黒板には一瞬にして赤丸が重ねられる。
「廣瀬は学年トップだ」と、ハゲた数学担当は独りごちた。
「1回死んでから俺のとこ来るぐらいがお前はちょうどいいよ」
……嘘でしょ。
この人って欠点ないの?
あるとすれば、その歪んだサディスト染みた性分くらいか。