キミの世界で一番嫌いな人。
今日の検診はいつもより早く終わったはずなのに、外はもう真っ暗。
今日は体育祭の練習が放課後までかかっていたから、結果的にいつもと変わらない時間帯。
「今日はもうレストランで済ませちゃおっかなー」
昔からその場所だけは好きだった。
家族で外食とかしたことが無いからこそ。
院内のレストラン。
そこだけは特別な空間に見えた、幼い頃。
「ハンバーグセットでご飯大盛ね!」
「あらっ、青葉ちゃんじゃない!どうしたの男の子の格好なんかしちゃって!」
「ま、まぁ色々ありまして…」
家にいるよりも、この病院にいた期間のほうが長いから。
昔からの従業員はほとんどが顔見知り。
食堂のおばちゃんであるこの女性も、記憶の中より少しシワが増えて太ったように思う。
「はい!ハンバーグセットでご飯大盛!」
「わ~!美味しそう!」
デミグラスソースがこれでもかと言うくらいにたっぷりかかったハンバーグ。
頬を緩ませながら席を探して…っと。
家族と食事をする入院患者だったり、この病院の先生たちだったり。
様々な人が座っているけど、比較的今日は空いてるみたいでラッキー。