キミの世界で一番嫌いな人。
───と、そんな場所に。
「っ!!」
見慣れた栗色を発見して、思わずバッと物陰に隠れた。
窓際、カウンターに座る背中。
私と同じブレザー。
左耳のピアス、整った横顔。
どうしてここに…。
なんてことよりも先に、バレてしまったのではないかと不安が過った。
だっておばちゃん、普通に“青葉ちゃん”って私のことを呼んでたし。
“男の子の格好”とも言われてしまった。
「あ、あの、先輩…、」
近づいて声をかけてみるけど返事はない。
窓のずっとずっと遠くを見つめる先には、キラキラ輝く夜景。
……あ、イヤホン。
この距離だとシャカシャカと音が聞こえる。
良かった、聞こえてないみたい…。
すると先輩は隣に座った私に気づくと、少しだけ目を見開いてイヤホンを取った。
「き、奇遇ですねぇ」
「…なんでお前がここにいるんだよ」
なんでって…。
言えるわけがない。
「知り合いが入院してて。俺はお見舞いに…」