キミの世界で一番嫌いな人。
『これを聞いてもらえないなら、私は訴訟を起こす』
そんな脅しを初めて実の父にした。
大手企業の幹部である男には効果絶大。
だからそれを逆手にとった行動だった。
CEOだかTKGだかETCだか知らないけど、私はお金ですべてを解決してしまおうとする父親が大嫌いだ。
そして私は来月からその男子校に男として転入する。
彼に会うために。
彼を支えるために。
本来、私が背負うべき罪を背負ってしまった人。
私より1つ年上の少年は、なにも知らないまま深い傷を背負ってしまった。
藤城 理久(ふじしろ りく)。
それが、その子の名前。
彼からすれば、私はきっと恨むべき存在。
「ねぇコーちゃん。謝罪の先って、なにがあるのかなぁ」
「…ーーー、じゃないかしら」
「……ーーー?」
「まだ青葉には早かったかもね。これ、ちゃんと保管しとくのよ」
小鳥遊 青葉(たかなし あおば)と書かれた青色のファイルを受け取って、病室を出た。
「…ーーー、なんて。一番ありえないよ」
だって私は、キミの世界で一番嫌いな人なのだから。